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リリーのすべて

この映画は私の中で今年の一番になった映画です。

この映画は1920年代のデンマークが舞台になっている、世界で初めて性別適合手術を受けた女性の物語です。英題は「The Danish Girl」そのデンマーク人の女ですね。

この物語には性別適合手術を受けたリリー(アイナー)と、その妻であるゲルタの二人のデンマーク人が出てきます。日本語での題は「リリーのすべて」となっていますがこの英題でのデンマーク人の女とはリリーのことではなく妻のゲルタのことではないかと思うほど、ゲルタに感情移入してしまう作品でした。

 

ふとしたきっかけでアイナーは自分の中の女性を自覚し、どんどん変わっていってしまいます。その変わっていく様が女に目覚めたばかりの5歳児のようなわがままさと柔らかさをもって映し出されています。これは演じたエディ・レッドメインの演技力が飛び抜けて素晴らしいからこそ魅せられるシーンですね。

しかしもっとすごいのは、愛していた夫が自分を愛している気持ちは変わらず手の届かない風に変わっていってしまうことを受け入れて支え、残酷なまでの痛みや辛さを表現した妻ゲルタ役のアリシア・ヴィキャンデルですね。

この方は本当にすごい。小さな表情の変化から底知れない痛みを感じ取れるんですよ。

リリーが身勝手にもどんどん女性へと変わっていくことを支える中で、ゲルタは心のどこかでわずかなアイナーの部分を信じているシーンがあります。リリーが性別転換手術を受ける際に「私はこれで幸せになれる。本当の自分になれる」とゲルタの希望をズタズタにしてしまうようなセリフを言うのですが、その時でさえ痛みを感じつつもリリーのことを涙を流しながら笑顔でその気持ちを応援します。その一瞬の痛みを正直観てられません。こっちまで痛くなって涙が止まらなくなります。ここは本当にすごいです。

 

原作は読んだことがないのですが、どうやら史実でゲルタはレズビアン的な方だったそうです。映画ではその演出は一切ありませんが、もしこの事実を知って映画を観ていたらこの感動はなかったかもしれません。自分の愛した人が自分への愛情が変わらないのに離れていく感覚というのは壮絶な痛みを伴うはずです。そんな時でも夫のリリーを応援し続けた究極の愛がこの映画のテーマであるはずです。この余計な設定を加えなかったのはこの映画の最大の成功だと思います。

 

ほかの方のレビューを観ていると、「アート映画だ」「トランスジェンダーものはよく分からない」というコメントをよく見かけますが、この映画はそもそもがラブストーリーです。確かに映像美やLGTBQを扱った作品ではあるかもしれませんがそこまで壁は高くはありません。偏った見方かもしれませんが「アート映画はよく分からない」というコメントの裏にトランスジェンダーへの嫌悪感や無関心が隠れているようでなんだか逆にもやもやしますね。

LGBTQの理解を促すためといえば確かにそうかもしれませんが、きっと制作者側はそこを重点に置いていない感じがするのでもっと気軽に見てもよいのではないかと思ったりもします。

 

 

この映画の舞台は1920年代ということで時代的にはファンタスティックビーストとほぼ同じ時代なんです。なので衣装や雰囲気なんかも似てはいます。

しかし、アメリカとヨーロッパの差なのかやはりこの映画の中の衣装の方が華やかな中に品があり、個性があり素敵だと感じてしまいました。

 

 

ゲルタとアイナーの駅で分かれるシーンは今思い出しても泣きそうになる良いシーンです。是非。